震災があるとマズローの欲求5段階説を思い出す件

マインド

熊本で大地震が起きてからしばらく経ちます。徐々に被害状況も明らかになってきており、現時点(2016/4/20)でも避難されている方も多くいらっしゃいます。

自分自身できることはそんなに大きくないですが、多少なりとも支援できればと思っています。

今回は、熊本の地震とは少し離れるかもしれないですが、こういった災害が日本で起こると毎回思い出すことを書いていこうかと思います。それは何かというと、マズローの欲求5段階説です。

マズローの欲求5段階説とは?

マズローの欲求5段階説とは、人間の欲求は階層化されており、低次から高次のものまで5段階あるということです。低次から並べると以下のようになります。

  1. 生理的欲求
  2. 安全の欲求
  3. 社会的欲求/所属と愛の欲求
  4. 承認(尊重)の欲求
  5. 自己実現の欲求

これはよくピラミッド型の図を見ることが多いのでこちらの方が見慣れている方も多いかもしれません。

 

もう少し細かく見ていきましょう。

一番下の1層目の生理的欲求は生きていくための最低限の欲求。つまりものを食べたいとか寝たいとか生きていくための最低限のレベルのものになります。

2層目の安全の欲求は生理的欲求よりは高い欲求になり、安全に生活したいという欲求になります。雨風しのげる家に住みたいとか健康な生活をしたいとか、脅威や危険にさらされたくない、という感じでしょうか。

3層目の社会的欲求/所属と愛の欲求は、自分が社会に必要とされていると感じたいというもの。どこかの集団二属したり、他者に受けいられることで、孤独や取り除きたい、仲間が欲しいという感覚になります。

4層目になると、これまで自分の外に求めるのではなく、自分自身を満たしたいとなります。集団や仲間の中で認められたい承認されたい尊重されたい、という欲求になります。

さらにそれが満たされると5層目は自己実現への欲求に変わります。自分の能力を活かして創造的な活動を行いたいという形に変わっていきます。

1〜3までは低次の欲求、4,5は高次の欲求と分けられることもあります。

災害とマズローの欲求5段階説

で、元に戻って震災とマズローの欲求階層説の関係性を見ていきましょう。

その前に前提として、現在の日本においては多くの人が低次の欲求は満たされているかと思います。少なくとも1層目のまずは食事や睡眠を確保したいという難民生活のようなことをしている人はほとんどいませんし、家に住めない人や最低限の健康的な生活ができていない人はそれほど多くはないでしょう。

また、それなりに社会的集団に属している人も多いですし、仲間や家族、近所の人などがおらず孤独で暮らしている人もそこまで多くないと思います。(もちろんこういった欲求が満たされない人はゼロではないでしょうが。)

日本では高次の欲求を満たせてはいなくとも、低次の欲求は満たされている人が多いでしょう。

災害が起きると・・・

で、そういった日本社会の中で、大規模な災害が起きるとどうなるでしょう。日本人の多くは低次の欲求は満たされています。階層で言えば、4,5あたりの欲求を満たしたいと感じている人が多いでしょう。それが今回のような大震災が起きるとどうなるか。

それまでは高次の欲求を満たしたいと思っていたのに、いきなりまず生きていくことを考えていく必要があります。欲求レベルが一気に1層目に落とされてしまう、という感じです。

まずは色々な希望・望みは言っていられなくなり、水や食料といった最低限必要なものを揃えて、寝る場所を確保する、という欲求を満たさなければならなくなります。5段階の内、1層目の欲求から満たしていく必要があります。

食料や寝る場所の確保ができるようになれば、最低限雨風は凌いでいきたいとか、病気になりたくない、とか考えるようになり、欲求段階は2段階目に移っていきます。さらに、最低限の健康な生活ができるようになると、孤独が寂しくなったり、集団にいたいと感じるようになり、3層目に至っていくわけです。

東日本大震災の時も思ったのですが、これまで満たされていたものが、一気になくなってしまい、いきなり生理的な欲求から満たさないといけなくなるというのは辛いことですが、災害が起きるとやむを得ないところでしょう。

震災復興は欲求レベルに合わせていくのがベター

逆に言えば、震災が起こった時は、この欲求レベルを1層目から順番に満たしていくことが必要なのでは?という気がします。

当たり前ですが、まずは食料や水、寝床を確保してあげて生理的欲求を満たしてあげること。これが最初に素早く行うことですよね。

ただ、それが満たされてくると、今度は別の欲求が出てきます。2層目の安全の欲求です。雨風凌げる場所で過ごしたいとなり、さらには健康的な生活をするために薬がほしいとか、安心して暮らせる欲求を満たしていく必要があります。また、いつまでも公民館や体育館といった本来住む場所ではないところで暮らしていると、しっかりした家で暮らしたいという欲求にもつながっていきます。安定して暮らせる場所を作ってあげることが重要になってくるので、被害がない場合は家で暮らしたいとなりますし、仮に元の家に住めないという場合には、仮設住宅などで生活してもらう形になるでしょうか。

そういった施策をもって、健康的な生活ができるようになると、次に求められるのが集団や仲間といった存在です。よく仮設住宅での孤独死などのニュースを見ることもあるかと思いますが、これは3層目の欲求を満たされなかったと考えていいのではないでしょうか。

特に震災が起きるとそれまでのコミュニティのままで必ずしも生活できるわけではなくなります。となると、これまで属していた集団から外れて孤独感を感じることも出てくるので、孤独を排除してあげる必要が出てきます。

という具合に震災復興って、マズローの欲求をどんどん満たしていってあげることとほとんど同じプロセスなんだなと個人的に感じています。これをどの段階まで求めていくかは議論のあるところですが、少なくとも1と2の段階は確実に実行していく必要があります。また、孤独死という問題も存在することを考えると3までは欲求を満たしていくことが求められているのでしょう。

もちろん人の欲求はそれぞれですし、同じ被災者といってもまだ2が満たされていないからという人もいれば、すでに3まで満たされているという人もいるでしょう。住んでいる地域や被害状況などでも異なるかと思います。

人それぞれにあった対策が望ましいですが、1人1人にあった形までは困難かと思いますので、ある程度地域や被害状況などにそって分類して進めていく必要があるのでしょうね。

とここまで偉そうなこと言っていますが、全体像でこうした方がいいというのは誰でもできますが、それを個別ケースに当てはめて実際に復興を計画・実行していくのは全く別。これから対応していく方は長丁場にもなって大変かと思いますが、是非前向きに取り組んでもらえたらなと思います。

 

ちなみにマズローと言えばこの本がけっこう面白いのでオススメです。

 

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