最近のプロ野球を見ていると、今まで聞いたことないような指標をよく見ますね。かつては打撃で言えば、打率・本塁打数・打点数・盗塁数など、投手で言えば、勝利数・防御率・セーブ数・投球回数などが指標の基本としてありました。ただ。最近は他にもいろいろな指標が出てきてますね。その中でも特に目にする機会が増えたのがOPS。打撃指標として定着してきた感じがします。ではOPSとは何なのかを徹底解析していきたいと思います。
新しい指標の元になるセイバーメトリクス
さて、OPSの話をする前にまずはセイバーメトリクスの話をします。そもそも、OPSなんて昔はなかったのになぜ最近出てきたのでしょうか。それを知るにはセイバーメトリクス(Sabermetrics)を知る必要があります。
セイバーメトリクスは、野球において、選手の成績や評価を統計学的な観点から分析していく手法で、主にアメリカMLBで進んできた手法です。セイバー(saber)とは、アメリカ野球学会SABR(Society for American Baseball Research)から名付けられている造語です。そもそもは1野球ファンであったビル・ジェームズ(George William “Bill” James )氏が自ら調べていったところからスタートしています。
従来の野球は指導者のセンスや勘に頼っていた部分が大きく、それまでに存在した指標をデータとして扱っていました。それに対し、セイバーメトリクスでは数値を統計学的に判断し、勘に頼らない采配ができるようになってきました。
このセイバーメトリクスによって、新しい指標が多く生み出されてきました。その中の1つがOPSになります。
OPSの基本中の基本
まずOPS(On-base plus slugging)は打撃指標になります。なので打者に用いる指標です。で、そのOPSは以下の式で算出されます。
OPS=長打率+出塁率
結構簡単な式ですね。長打率と出塁率という2つの指標を足す、これがOPSです。
長打率とは?
長打率とは文字どおりどれだけ長打を放ったかを示す指標になります。で、その長打率は以下の式で算出できます。
長打率=塁打数÷打数
塁打数とは、どれだけ塁を稼いだかを示すものです。
- 通常のヒット=1
- 二塁打=2
- 三塁打=3
- 本塁打=4
以上の数字を足し合わせていったものが塁打数になります。ホームランだと一気に4なのでホームランバッターの方が塁打数が多くなりますね。歴代の塁打数上位の人を見てもホームランバッターが並んでいます。
また、打数とは打席数から四球(フォアボール)・死球(デッドボール)・犠打(送りバント)・犠飛(犠牲フライ)・打撃妨害・走塁妨害を除いたものが打数になります。打席数が単純に打席に立ってプレーを終えたものに対して、打数はそれより少なくなるのが普通です。
長打率に関してはシーズン通して高い選手だと6割台(0.600〜0.699)とか場合によっては7割台(0.700〜0.799)の選手も出てきます。ホームランバッターの場合、二塁打も多くなるので、全体的に高くなる傾向がありますね。
ちなみに長打率の最高は4.000になります。つまり打数のうち全てホームランを打った場合は、4.000になりますね。シーズン最初の打席でホームランを打つと、その時点での長打率は4.000になります。ある程度試合に出ている選手なら4.000はほぼありえない数値となりますね。
出塁率とは?
OPSのもう一つの指標である出塁率についてです。出塁数とはその名の通りどれだけ出塁できたかを見る指標です。出塁率は以下の式で算出されます。
- 出塁率 = (安打数+四球+死球) ÷ (打数+四球+死球+犠飛)
出塁を見るので、安打(当然二塁打、三塁打、ホームランも含みます)だけでなく、フォアボールやでッドボールも出塁とみなします。長打率は打数で割っていたのですが、出塁率は打数にフォアボールと死球と犠牲フライも含んだもので割ります。
四球と死球については、割る数の方に含まれているのでなんとなくわかるのですが、犠牲フライがちょっと意外ですね。ちなみに犠牲フライについては以前は計算式に含まれていなかったのですが、1985年から計算式に含むようになりました。犠牲フライは良く考えれば外野フライを打ってアウトになるものなので、凡打と同じと考えて式に含むようにしたのでしょう。
ちなみに、出塁率は高い選手だと4割台後半(0.450〜0.499)を叩き出します。また、出塁率の最高値は1.000(10割)となります。つまりどんな時も常に出塁しているということですね。これも最初のゲームならありえる数値ですが、通常ゲームを重ねていくと1.000はほぼありえない数値となりますね。
OPSの最高数値は?
さて以上がOPSの算出方式になります。これを踏まえてOPSの数値を出すと、最高数値は5.000になります。例えば1打席終えた時点でホームランを打った場合、長打率は4.000、出塁率は1.000となるので、2つを足して5.000が理論上の最高数値になります。実際は長いシーズンを戦うとそこまで高い数値になることは少なく、0.900を超えるとOPSが高い選手となります。OPSは1.000を超えるとかなり高い数値であり、シーズンによっては1.000を超える選手が出ない年もあります。それだけ高い数値と言えそうです。
逆に普通の選手のOPSは7割台(0.700〜0.799)であり、6割台以下だと悪い数値とみなされます。
歴代OPSトップ10
ちなみにこれまでのシーズンの歴代最高のOPSのTOP10の順位は以下となります。
選手 | OPS | 年度 | 所属 |
---|---|---|---|
王貞治 | 1.293 | 1974年 | 読売ジャイアンツ |
ランディ・バース | 1.258 | 1986年 | 阪神タイガース |
王貞治 | 1.255 | 1973年 | 読売ジャイアンツ |
落合博満 | 1.244 | 1985年 | ロッテオリオンズ |
ウラディミール・バレンティン | 1.234 | 2013年 | 東京ヤクルトスワローズ |
落合博満 | 1.232 | 1986年 | ロッテオリオンズ |
アレックス・カブレラ | 1.223 | 2002年 | 西武ライオンズ |
王貞治 | 1.211 | 1967年 | 読売ジャイアンツ |
王貞治 | 1.210 | 1966年 | 読売ジャイアンツ |
王貞治 | 1.204 | 1976年 | 読売ジャイアンツ |
シーズン通してOPSで1.200を超えるとなると化け物クラスばかりですね。
OPSでわかることは何?
さて、OPSの算出方法などはわかったとして、このOPSを用いることで何がわかるのでしょうか。OPSは、得点の入りやすさを示すものだということです。野球は得点を競うスポーツです。バッター側としたら点を取ることが求められるでしょう。もちろん、打率や打点なども指標としてあげられます。ただ、OPSは他の指標よりも得点の入ることにつながりやすい、得点と相関性が高い指標だとされています。
OPSが高い=得点が入りやすい、となれば、OPSが高い選手を集めるとたくさん点数が入る可能性が高いことになるということが統計上出てくるわけです。
また、OPSは比較的簡単に出すことができるというのも利点です。長打率や出塁率は成績がわかればすぐに出すことができます。それを足すだけで、事細かなデータも不要で出すことができます。このわかりやすさも定着しやすい要因ののではないでしょうか。
まとめ
近年ではOPSは球場で映すデータにも載る機会が増えましたし、単純に打率・打点・本塁打数だけで測るのではなく、OPSでこの選手は良い選手だと語る機会も増えてきました。意外と仕組みは単純なので、選手をOPSで語っていくのも面白いですね。
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