なぜワクチンが足りなくなる?ワクチン供給不足の理由とプルウィップ効果

マインド

新型コロナウィルス感染拡大が続いていますが、2021年3月からワクチン接種がスタート。4月からは高齢者のワクチン接種が開始。6月に入ると1日のワクチン摂取が100万人を超える日が続き、6月末で約4,500万回の摂取されました。想定以上に早いスピードでワクチン摂取が進みましたが、2021年7月、ワクチンの供給量が減少するというニュースが出てきています。そのため、各地で今後の摂取申し込みを一時ストップし始めました。

ワクチン予約、各地で停止 供給先細りで不足懸念
新型コロナウイルスのワクチン予約を停止する動きが各地の自治体に広がっている。米ファイザー製ワクチンの供給が細り、希望量を確保できないことが判明し、不足懸念が高まった。接種計画の見直しを迫られる可能性もあり、困惑の声が上がる。千葉市は2日、個別・集団接種のすべての会場の新規予約を一時停止すると発表した。ワクチンの配分計画...

今回はなぜワクチン供給不足となってしまうのか。その理由を見ていきます。

そもそものワクチン供給体制

まず、そもそも最初の計画を見ていきましょう。

新型コロナワクチンの供給の見通し
新型コロナワクチンの供給の見通しに関する情報を掲載しています。
厚生労働省資料より https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000776408.pdf

これを見ると6月末までに一般向けで約8,000万回分は送付している形に。7月については数量は減るものの、第9クール(7月1週目・2週目)、第10クール(7月3週目・4週目)に追加で2300万回程度は発送。一般摂取だけでも1億回分は確保している状況です。実際には、医療従事者向けもあります。また、国の大規模摂取ではモデルナ社製ワクチンも利用しているので、それも含めるとさらに多くのワクチンが発送されているでしょう。

また8月についても7月と同程度のワクチン供給となる見込みです。そのため8月、9月も2300万回程度の見込みとなります。下記の発表を見ると、ワクチン供給量が大きく減少するわけではないようです。

自治体ではキャンセル対応も

ところが自治体では新規のワクチン接種申し込みを中止にしている自治体も登場しています。さらには、一度予約したものをキャンセルする自治体も出てきました。また、新規予約を停止するところも出てきています。

ワクチン1回目予約全てキャンセルへ 神戸市、6日以降分 新規予約も一時停止
 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、国からの米ファイザー製ワクチンの供給量が大幅に不足するとして、神戸市の久元喜造市長は2日、市内の全ての接種会場で1回目

ではワクチン総数は足りているのにな摂取が進まなくなったのでしょうか。

ワクチンは2回接種が必要

まず大事なのはワクチンは2回接種が必要です。ファイザー製であれば3週間感覚をあけて2回の摂取をしなければいけません。2回摂取が必要ということは、ワクチン確保も2回分が必要となります。自治体は2回分の確保ができないまま予約する対応は取りにくいです。そのため、どうしても摂取回数以上の在庫を確保しないと、予約受付できなくなります。

9月に摂取完了なら8月までにワクチン確保したくなる

ワクチン摂取体制が構築されている自治体では早くワクチンを供給してくれればその分摂取を進めるはずです。その場合、国としては11月頃までには完了させるというワクチン摂取ですが、早いところでは9月末には完了させる体制になっている自治体もあるでしょう。そうなると8月中に摂取対象者分のワクチン確保を進めたいとなるでしょう。そのため、体制が整っている自治体ほど、ワクチン希望量が大きく増えていくことが考えられます。

それを示すように、ここにきてワクチン希望量が増えています。

神戸市の例を見てみましょう。神戸市の場合、比較的早くから摂取体制を整え、ワクチン摂取券はすでに送付済み。(ちなみに私の所にもすでに届いています。)7月からは順次50代以下の方への摂取予約を進める計画でした。それが今は一時中止となっています。

多すぎるワクチン要求量?

ここで神戸市のワクチン要求量、供給量を見てみます。神戸市HPに公開しています。

神戸市の第8クール(6月3週目4週目)、第9クール(7月1週目2週目)はそれぞれ約36万回、31万回の希望を出しており、さらに第10クール(7月3週目4週目)には約81万回もの希望を出しています。ちなみに神戸市の人口は約150万人なので、ワクチン摂取対象全員が1回打ち終わる量を1ヶ月半で要求している形です。

実際は16万、14万、16万回が供給される形になります。140万の要求に対し、届くのは46万回分程度なので、希望に対する供給量は大きく減少している形です。

これを見ると要求量と供給量に大きなギャップができてしまっています。さすがに最後の80万回の要求は多すぎる気もしますが、早く予約を完了させるにはこれくらいの量がないと厳しいということでしょう。

神戸市:ファイザー社製ワクチンの不足による1回目接種予約のキャンセル・新規予約受付の一時停止(2回目接種については予定通り実施)

国からの供給量が少ない?

ところで、これだけワクチンが足りないと言われると、国からの供給量が少ないのではないか?という疑問も出てきます。確かに、7月以降の供給は5月6月に比べると減少します。5月が約3600万回分、6月が3400万回分なので、8月以降の2300万回分は大きく減ることにはなります。ただ、それでも2300万回は確保できています。6月までの摂取実績が4,500万回程度なので、まだまだ在庫はどこかにあるはずです。

そしてこの計画は以前から示されているものなので、ここにきて大きく減少しているわけではありません。月単体では少なくはなっていますが、1日100万回摂取レベルには耐えられる量でしょう。

ちなみに先ほどの神戸市への供給量を見ても、供給される量は人口比率でみれば、妥当かむしろ多めに配分しているレベルです。ただし、供給量以上に自治体からのワクチン要求がきてしまっているのが現状でしょう。

自治体間でワクチン争奪になっている

以上を踏まえて、今のワクチン供給を考えると、自治体間で我先にとワクチンを要求している状況になっていると考えられます。もちろん2回摂取が必要なので、1回目の予約をする前に2回目の分も含めて要求する形を取っているはずです。実際にはその月には使わない分も含めて、各自治体から1ヶ月は多目の要求がきていると予想できます。

こう書くと自治体が必要以上に要求しているように感じますが、自治体からしても2回分確保しないと予約を受け付けにくいのは間違いないでしょう。悪い側面ばかりではなく、各自治体が摂取体制を整えたというのも示しています。体制が整っているからこそワクチンをもっと供給しろと伝達しているのです。その辺りは自治体の頑張りも見ていく必要があります。

プルウィップ効果がモロに出ている

ここで今日の本題に入ります。それがプルウィップ効果です。

ブルウィップ・・・牛などの家畜用に使うムチのこと
川下から川上に向かうと需要変動が増幅する。牛にムチをふるう様子に似ていることからブルウィップ効果と呼ばれる。

おそらく部品供給などをしている人ならわかると思いますが、実際の需要と部品供給は一致しません。特に部品供給が厳しい状況にある時、完成品メーカーは実際の需要以上に部品の確保に努めます。これを防ぐために、部品供給側は複数ある完成品メーカーの実需を見ながら必要量を分配する作業が必要になります。

この必要量を分配する作業を行うと実際はどうなるでしょうか?完成品メーカーは「今部品供給量が少ない!少しでもウチに届くように多めに発注しろ!」となり、どのメーカーもウチだけは部品が不足することがないように動きます。もちろん、1社だけがそうであればそこまで全体の供給量も変動しないですが、当然別の缶製品メーカーも同じことを考えます。そのため、実際の需要よりも多くの発注が部品メーカーにかかります。それを見て、部品メーカーはさらに多くの発注があるから部品供給を調整しようとする。その結果、完成品メーカーはさらに多めに発注する。この悪循環に陥り、どんどん実需と部品要求量が乖離していきます。

今のワクチン要求量とワクチン供給に関しても同じことが起こっています。

ワクチン摂取体制は整っている。ワクチンさえ手に入れれば良い。ワクチンには限りがあるので早めに手に入れておきたいから要求量を多めにしておく。多少多めに発注しても期限までに打ち切る体制ができているから問題ない。

自治体はこのように考えます。

一方、国は、こう考えます。

ワクチンの供給量は決まっている。入る量に合わせて供給するしかない。一部自治体に多く渡すと足りない自治体も出てくる。そのため、ある程度人口比率(実需)に応じて入ってきたワクチンを供給する。加えて、在庫が少なくなっている自治体には少し多めに提供しよう。

こんなイメージではないでしょうか。

結論:総量が決まっているのでその枠でやりくりするしかない

結論から言えば、ワクチンの毎月の総量は決まっているので、その中でやりくりするしかないです。現在は1日100万人摂取を超えて、それ以上に供給が進んでいる状況です。そのため、7月まではこのペースは継続するとは思いますが、8月以降はやや落ちてくるかと思います。

一方で複雑なのが、ファイザー製の職域摂取もスタートしています。そのため、摂取自体は1日100万人程度は確保できる気もします。また、職域摂取が進むと実際には自治体でワクチンを打たなければいけないと思っていた人がすでに摂取しており、自治体での予約は不要だったということも出てきます。これまではとにかくガンガン摂取を増やせで大丈夫でしたが、今後は自治体ごとに本当に必要な人(実需)を見極めていく必要も出てきます。

さらに実際には打ちたくない人もいるので、最終的にはどこかはワクチンが余っているけど、別の自治体には足りていないということも起こります。それを確認するためにも、ワクチンをすでに摂取した人、していない人を見極めてワクチン供給する。そのフェーズが近づいている気がします。

何れにしてもワクチン摂取が早く進んでいるのは良いことです。ワクチンがまだの人もいずれ順番はくるので、焦らずに待つのも大事ですね。

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