スキルとテクニックの違い

ビジネス

最近とあるセミナー(というより小さな講演会)みたいなやつに出た時に、ものすごく違和感を感じたことがあります。その日はそこまで深くも考えていなかったんですけど、翌日あたりから、あの違和感は何だったんだろうと思い、何もない時間に物思いにふけりつつ、考えていたわけです。

で、自分の中で、その違和感の原因がこれかなというのを掴めました。今回はそれはスキルとテクニックの違いについてです。

セミナー参加の決めてとなるものとは?

皆さんがセミナーやら研修やらに参加する時に求めるものって何になるでしょうか?

当然ながら、セミナーに参加する時って、何かの知識や方法、または自分の価値判断を高めるものを身につけたいと考えて参加していると思います。で、それを得たいと思って参加するのが普通です。会社の研修であれば、「特に何か得たいわけじゃなく研修だから」、「研修だと1日仕事しなくて楽だからいいな」なんて思ってる人もいるかと思いますが、自費で出席したセミナーは異なるでしょう。

さて、話をもとに戻して、自主的に参加するセミナーの場合、それに行くかどうかの決め手は何でしょうか?もちろん、内容や価格・場所・日時などの要因によって決まるのですが、その大きな要因はタイトルだと思います。

「経営者が知っておきたいマイナンバー制度」なんてタイトルであれば、マイナンバー制度を知りたいと思っている法人経営者、マイナンバーで気をつけないといけない点を知りたい方が聞きにいきたいと思うでしょう。こういった知識に近いセミナーは比較的誰が受けるべきかわかりやすいですね。

また、「成功率を5倍に上げるセールストーク術」みたいなタイトルであれば、営業の方が行きたいと思うでしょうし、「自己実現のための自己ブランド力向上セミナー」みたいなものであれば、個人で何かやりたいと思ってる方が参加したいと思うかもしれません。

いずれにしても、タイトル次第で興味を持つ、行きたいと思うかは決まるでしょう。

参加者が実際にセミナーで求めるものとは?

では、実際に参加者がセミナーで求めるものは何でしょう?

参加者がそのタイトルで知りたい、聞いておきたいと思った内容が求めるもの、と思う方多いでしょう。その通りですけど、ただその中でも知りたいと思う部分が微妙に違うことがあるんですよね。

例えば、上記の「経営者が知っておきたいマイナンバー制度」というタイトルなら完璧な知識系セミナーになるかと思います。ここで知りたいと思うものって単純な知識である人が多いと思うんです。要はこういう時にはこういう対応をしないといけないとか、こうしてしまうと罰則がある、とかイメージ的にはメモをとってそのまま保管しておかないといけない感じのものかと思います。

知識が知りたいので、逆にいえば、それほど知識以外のことは知らなくていいわけです。もちろん知識以外で経営者としての考え方とかを身につけられる、考えさせられるものであれば、それは喜ぶ人も多いと思うんですけど、基本的には知識を知らないといけないんです。知識が求めるものになるからです。

成功率を5倍に上げるセールストーク術」だと技術を知りたいわけですよね。どうすれば営業が成功できるか、そのための話し方、あるいは発するべき言葉、立ち振る舞いなどの技術を知りたいわけです。「自己実現のための自己ブランド力向上セミナー」も技術かと思います。自分のブランド力をあげるためにはどうすべきなのか、振る舞い方、人への接し方、行動などをどうするのかの技術が知りたいんです。

スキルとテクニックの違い

さて、いよいよ本題に入ります。ここでいう技術というのは大きく分けると2つに分かれます。それがスキルとテクニックです。日本語で言えば、両方とも「技術」でいいと思うんですけど、これがだいぶ違うんです。

エディの考え

ちょっとここで、前ラグビー日本代表のエディ・ジョーンズHCがこのスキルとテクニックに対してこう発言しています。

私は子供たちをコーチングしたことがないのですが、ラグビーで一番重要なのはスキルです。スキルとテクニックの違いを知ることも大切です。日本のコーチはテクニックばかりを教えます。キャッチパスをとっても、どういうパスをどんなタイミングで出すかを教えるのがスキルです。子供たちに教えるときは、状況判断とセットにする必要があります。

日本ラグビー協会HPより引用 https://www.rugby-japan.jp/2014/04/18/id25271/

これは子どもに対してのコーチングに対する質問で答えた内容ですが、スキルとテクニックの違いを表したものかと思います。

テクニック=基本的な動作・行動など

テクニックというのは技術ではあるんですが、それは基本的な動作や行動・知識などです。あくまで基本となるものです。ラグビーの練習でいえば、ランパスと呼ばれる走りながらパスを受ける練習がそれに当てはまるのでしょう。あるいは、子どもの勉強で言えば、基本的な計算方法、例えば分数の計算とか、方程式の解き方がテクニックだと思います。

当然テクニックにもレベルの低いものから高いものがあると思います。が、あくまで基本的なもの、あるいはクローズされた中で発揮できるものと考えていいかと思います。

スキル=意思決定や状況判断を伴って行われるもの

その一方で、スキルとは何か、と言われれば、意思決定や状況判断を伴って行われるものがスキルです。ラグビーで言えば、エディHCが言っているみたいにどういう状況でどんなパスを出すか、というのがスキルになります。相手のディフェンスが外側構えに出ているから近くに素早くパスを出すとか、相手ディフェンスが自分に寄ってきていないからまずディフェンスに近づいてパスを出すとかが、スキルになります。勉強の例で言えば、文章題なんかはスキルになるでしょう。文章が問われていることをもとに、どの計算式を使えばいいのか判断して計算するという感じです。

テクニックではなくスキルを身につけないといけない

上記のようにテクニックは比較的日本人が身につけているものかと思います。しかもテクニックは反復練習しやすいので、あまり考えなくても教えやすいものです。練習している方も練習した気になりますし、何度も繰り返すことで身に付いた実感も出てきます。その一方でスキルは、そう簡単に身に付くものではないです。そこに状況判断が入りますし、1つの正解が導きだしにくい、というか正解が複数ある場合もあるし、実は正解はなかったなんて時もあるかもしれないです。

いずれにしても、自己判断を伴わないといけないので、何かしらの考えや根拠がないといけません。教える側としては、どうしてそう考えたのかを知った上で、それが良い選択だったのか、別の選択肢がなかったのか、を一緒に考えていかないといけないわけです。

日本人はこれができない、あるいは苦手としている人が多いと思います。もちろんテクニックも大事です。それはそれで身につけていくべきものではあると思うのですが、スキルを身につけていくことが社会で必要とされていることの場合が多いと思います。

セミナーで求めるものはテクニックorスキル?

さて、以上をふまえて冒頭の自分の違和感の話に戻します。(なお、どんな内容のセミナーだったのかは、省略します。というかまぁそれを晒すことが目的でもないので。)

自分が違和感を感じた理由は、おそらくこのスキルとテクニックの違いにあるかと思います。そのセミナーで話していた内容はテクニックの話なんです。○○という方法を使いましょう、と決まりきったパターンでの内容を話をされていました(もちろん、それを補完するために○○する理由とかも話はありました)。でもそれってテクニックなんです。悪くいってしまえば私のマニュアルに沿ってやればOKという内容なんです。

もちろん、それを求めていた人はいました。というか、他の人の質問を聞いていると、むしろテクニックを求めていた人が多かったような気がします。ただ、自分が求めていたものはスキルなんだなと感じました。マニュアルに沿ってこうやれば出来るというのは、自己判断が入ってないんです。それだけだと、ちょっと変化があった時に一気に対応できなくなります。これではそのパターンの時にしか使えないものになってしまいます。

ただ、ではそのセミナーがだめなのかというと、そういうわけでもないです。なぜなら、多くの人はテクニックを求めていたようだからです。(あくまで推測ではありますが)

そこはテクニックを教えてもらうために、それを教えてほしい人たちが集まる場だったなら、自分がその場にスキルを求めていったことが間違いだったわけです。

スキルを求めていきたいし、教えていきたい

とは言いつつも、自分としては、やはり単純なテクニックだけのセミナーってあまり行きたくないんです。もちろん分野によってはテクニックを知らないので知る必要があるものも多いんですけど、テクニックなら、Webや本で大体なんとかなるものが多いです。なので、セミナーに行くからにはスキルを高めていきたいわけです。そのようなスキルを教えてくれるセミナーがない訳ではありません。これまで参加した中で、自分のスキルを高めてくれるような、自己判断を伴う必要があるものを教えてくれるものもありました。こんなセミナーは高額でも行く価値があるものだと感じます。

その一方で、そういったセミナーはそんなに多くないと思います。逆に自分の立場で考えると、自らがセミナー開催する際に、テクニックだけを教えている場面はないかなと振り返りが必要ですし、これまで相談などきてくれた方にもテクニックだけを教えてしまった人もいるな、と反省もしないといけません。今後はスキルを自ら高めていく必要もありますし、それと同時に人にテクニックではなく、スキルを伝えていくことも大事だと考えたきっかけになった、というお話でした。

 

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