ウエスティングハウス(WH)買収から考える結果論と未来

ビジネス

ウエスティングハウス(以下WH)という会社名をニュースで見る機会が増えてきた。というより、東芝問題がいよいよ大変になってきたと言った方がいいかもしれない。

米国連邦倒産法第11章に基づく再生手続きを申請したらしく、これに伴う営業外損失などで2016年度の東芝は1兆円を超える赤字になるらしい。

まぁ、その辺りの事情とか、「なんでこんなことになったんや」というのはさておいて、ちょっと個人的な昔の話を思い出したので今回はその話をします。

就職活動で東芝を受けた。そして内定ももらってた。

時代は2006〜2007年。僕がまだ就職活動をしていた頃の話。当時はまだリーマンショック前で就活にはかなり有利だった時代。大手企業の決算も好調で就活的には超売り手市場と呼ばれてました。

そんな中、某企業を受けます。それが東芝。最終的にはメーカー中心で考えてましたし、その中の1つとして受けました。ちなみに、当時は東芝には通常枠と別に大学枠ってのがあって、同じ大学の中から選抜されていくってシステムがあったようです。まぁよくわからず受けてたんですけど、とりあえず二次面接までは合格。で、どうやら大学枠の場合はこの二次面接が実質内定かどうかの分かれ目になったらしく、そこを通った時点でほぼ内定だったみたいです。

ただ、三次面接、四次面接(最終面接)もあるのでそれは受けに来てくださいということなので東京まで受けに行きました。通常は三次面接→合否→受かれば四次面接(最終面接)となるのですが、三次面接の翌日に最終面接もやっちゃうから、という話だったので、ホテルもとってもらって一泊二日での東京行きとなりました。

初日は三次面接。面接と言いながらまずは説明会的なものをやって、その後に面接を順次行っていくという形をとっていたので、着いてからはまず説明会となります。それが終わると三次面接。一応面接っぽくやってましたが、ホテルもとってくれてますし、夕方には「明日は○時に本社来てくださいね」と電話もあったので、まぁ予定通りかとなりました。

ちなみに、この三次面接時にたまたま中学・高校の同級生といっしょで、そこで「明日最終でしょ?」と聞いたら、「えっ?そんなんないよ」って言われました。この時点で大学枠があるということを知りました。(でもその同級生の方が偏差値的にも世間的にも上の大学だったんですけどね。)

次の日は最終面接ってことでしたが、まぁ形式的な感じだった気がします。「他に内定もらっているところありますか」って聞かれたので「○○は内定もらって、後△△は次最終あります」って言ったら「ならこちらも早めに動くようにしますね」と言われました笑。

就活生の皆さんも困ったら「内定あります」と言うと相手企業も対応してくれるので割とオススメです。(中には逆効果の会社もありますけどね)

そんでもって翌日だったか翌々日だったかは忘れましたが、電話がかかってきて内定もらいました。結果的には辞退することになったんですけど、まぁそれはそれでいい思い出です。

ウエスティングハウス(WH)買収は当時のイチオシ事業

さて、その選考の中で説明会があると書きましたが、当時最も東芝がイチオシしていたのが、ウエスティングハウスの買収でした。当時はまだ原発事業は今後伸びていく分野だとされており、加えて社会インフラは家電などと異なり、安定事業につながることもあり、各社力を入れていきたい分野でした。

当時の説明を簡単にまとめると、

  • 原発にはBWR(沸騰水型軽水炉)とPWR(加圧水型軽水炉)の2つの方式がある
  • 当時の東芝はBWR方式、WHの方はPWR方式
  • WHは原発の老舗メーカーで原発事業を買収し、東芝の柱にしていく

といった感じです。これは選考途中の説明会でもありましたし、もちろん選考前の説明会でも説明されました。

当時は、「ウエスティングハウス(WH)買収によって世界的原発インフラメーカーになって、安定した利益を出せる柱を作っていける体制を構築した」という東芝の説明はあながち間違っていなかったんだと思います。それに対して就活生側も少なくとも僕みたいな文系人間は「そうなんだ、じゃあこれからはもっと伸びていくんだ」くらいにしか思っていなかった人も大半ではないでしょうか。

それよりかは、まぁ東芝だしなんだかんだ言っても大丈夫だろうくらいにしか思っていなかったってのが本音だったと思います。

半導体は価格変動激しく、安定した事業ではなかった

ちなみに、東芝といえば当時から中核事業だったのが半導体事業。国内メーカーの多くが撤退を迫られる中、唯一残った企業と言ってもいいでしょう。現在では半導体事業の売却を模索しています。

よく半導体こそが東芝の中核で、なぜ原発事業に依存し、半導体事業を売却するのか、と思われますが、半導体は需給変動が激しく、価格変動も激しい事業でした。そのため、調子良いときはものすごい利益を稼ぎだすけど、調子悪いとものすごい赤字を出してしまうという諸刃の剣的な存在となっています。まぁその状況を作り出したのが技術者を海外企業に流出させてしまった東芝自信とも言えるので、その辺はなんとも弁解できないですけど、少なくとも2006〜2007年の時点では、半導体は中核ではあるけど、安定事業ではなかったのは確かでしょう。

ちなみに結果的に僕が入ったメーカーも一応電気業界だったのですが、半導体は価格が安定しないから事業としてやらない、という方針を貫いていました。まぁ割と堅実なことしかやらないし、財務安定したメーカーだったので、それも正しい判断だったのかもしれません。

未来のことはわからない。今のイチオシは将来自らを滅ぼすこともある

さて、今回言いたいのは、別に東芝がどうのこうの言いたいわけではないです。大事なことは2つで、1つ目は未来のことはわからないということ、2つ目に今イチオシのものも将来はそれが癌となることもあるということ、の2点です。

おそらく今就活中の学生も色々なところの説明会を聞いて、この会社はいいなとか、この会社はこの先どうなるのだろうか、とか思いながら説明を聞いているでしょう。

はっきり言いますが、今その説明会で推している事業が将来本当に会社を成長させる事業になるかはわかりません。むしろ逆で会社を滅ぼす事業になることもあります。推している事業には当然相当投資しています。それに見合うだけの価値があると思って判断しているんです。でもそれが将来どうなるかは話が別。大規模な投資をしている分、失敗した時の影響も大きいことの方が多いです。

もちろん、投資に見合ったリターンを得て、実際に成長していく事業もあるでしょう。その場合は成功例になります。ではその会社のイチオシ事業が成功するか失敗するか、はどうすればわかるのでしょうか。結論から言えば、誰もわからないです。どんな評論家だって、経済ジャーナリストだって、優秀な経営者でもわかりません。だからこそ、雑誌や新聞なども含めて、僕らは結果で判断しています。うまくいった事業については、「あの決断が良かった」といって褒めて、失敗した事業には「あの時の決断がまずかった」といって責めたてます。はっきり言って結果論でしかないです。

自分が入った会社がこの先成長していくのか、成長しないまでも安定して定年まで持ちこたえるか、それとも危機に陥ってしまうのかなんて誰にもわかりません。

就活生の皆さんは今業績好調だからとか、有名な大企業だからとかでは会社を選ばないほうがいいです。というより、それで選んでもいいですけど、将来どうなるかは知らないよ、という方が正しいでしょうか。

上記は東芝の例をあげましたが、僕が就活していた当時でいえば、SHARPは絶好調で人気もあったし、東電なんてそれこそ安定・高収入企業の代表みたいな存在でした。ANAよりは安定しているJALの方が人気ありました。

そういう企業でも何かしらのきっかけで倒産、あるいは大きな事件など引き起こしてしまうこともあるわけです。でもそんなことはみんな分からない。分からないという前提で自分が勤める企業を考えることが大事だということです。今、安定している企業が10年後どうなっているかなんてわかりません。しかも従業員が少ないベンチャー企業ならまだしも、大企業であれば、そんな一大事を1人の社員がどうにかしようなんて思っても無理です。自分ではどうにもならない世界の話がほとんどです。

なので説明会などで会社の話を聞く時は面接で話す分にはいいですが、会社選びに関してはアテにしない方がいいでしょう。

強いて挙げるなら自己資本比率は確認しておくといいかな

ただ、会社選びに関して、強いてあげるとすれば、自己資本比率については確認しておくといいかと思います。自己資本比率とは総資本(総資産)に対する自己資本比率のこと。総資本には銀行などからの借入金なども含んでいます。自己資本が高ければ、仮に業績悪化してもまずはなんとか持ちこたえることができますし。なのでこれくらいは見ておくといいでしょう。(もちろん上場している大企業の話です。)

結果論こそ最強。でも結果論で未来は分からないし、誰にでも当てはまるものでもない

ちなみに上記でも書きましたが、人は結果論で話をしたがるものです。自分がやってきてよかったものは人に薦めるし、逆に自分が失敗したなと思うことは「あれは良くないからやめとけ」とか言います。

こういったアドバイスはもちろん参考にするのは問題ないですが、でも鵜呑みにするべきものではないです。そのアドバイスは間違いかというと、そうではないです。その人にとってはそれが正解だったからです。結果的に正解だった(あるいはそうすべきだった)方法を教えてくれます。これは結果論です。結果論は最強です。だって実際に正解だったという実証ができているからです。だからこそ人は結果論で語りますし、結果的にうまくいったやり方なので、その人(あるいはその組織)にとってはそれこそ正しい解になります。

でも、それはあくまでその人が、その時代に、その状況下でとった方法が正解だったというだけで、人が変われば、時代が変われば、状況が変われば不正解にもなりえます。別の人でも正解になることはあります。でも絶対ではないです。

なので、結果を出した人はそのやり方が正解です。結果論は最強です。でもその同じやり方で将来うまくいくわけではないし、誰でもそれでOKというわけでもない。

この辺りはスポーツにも大きく当てはまると思います。特に大きな会社で結果を出せば、賞賛されます。W杯やWBCなどはその典型でしょう。途中どれだけ失敗しても、結果さえ出せば賞賛されます。「あの決断がよかった」とか「背景にこんなことをしていたから勝てた」とか、「一致団結していた」とか結果から判断されます。

結果が出せないとボロクソです。「あそこであんな決断したから」とか「不協和音が・・・」とか書かれます。結果に至る過程の中では、成功に至る要素も失敗に至る要素もどちらもあります。成功したら、そこから成功した要素を抜き出し、失敗したら、失敗に至った要素を抜き出されるだけです。結果で判断される厳しい世界です。

東芝だって、ウエスティングハウス(WH)買収で結果を出していたら賞賛されていたでしょう。でも失敗した。だからダメなんです。結果を出していたらもちろんなんの問題もなかったでしょう。

人は過去はわかりますだから結果論で判断します。でも未来は分からない。一度成功したやり方がうまくいくとは分からないです。でも逆に言えばだからこそ、人生面白いのかもしれないです。

 

 

 

 

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